ディズニー映画「ズートピア」のトリビアからアメリカ社会を学ぶ
どうも、好きな動物は「ウシ柄のネコ」のマルヒロです。
以前トイストーリーを使って英語を勉強する記事を書きました!
トイ・ストーリーの過去作品をおさらいしながら英語も勉強しちゃおう
今回はそんなトイストーリーとは一味違う、アメリカの社会に関していろいろ学べる『ズートピア』をご紹介します!
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切れ味抜群なアメリカ社会の風刺
この映画はもともと偏見や差別という問題に切り込んだ作品として話題になりましたが、映画内で登場するセリフや演出にはそれを裏付けるものがたくさんあります。
それらの中には英語のセリフでしか伝わらないものや、アメリカ文化に馴染みのある人しか理解できない表現もあるので、まずはそれらを解説していきます。
オバマ大統領に対しての人種差別発言をパロディ
映画の冒頭でジュディとニックが出会うシーン。
ニックの「詐欺」に騙されたジュディは、アイスクリーム屋さんをあとにする彼を追いかけて、
"I just wanted to say you're a great dad and a.. a really articulate fella."
(あなたは物事をはっきり言える、素晴らしいお父さんだわ)
といいます。
一見すると普通の褒め言葉ですが、実はこの"articulate"という言葉は、使い方と使い手によっては「自分でちゃんと言えてえらいでちゅね~」というバカにした発言になってしまうのです。
特に大人が子どもに向かって言ったり、白人が白人以外の人種に言うときは、バカにしたニュアンスで受け取られます。
実は2007年にアメリカ前副大統領のジョー・バイデン氏(当時はまだ上院議員)が、当時大統領に立候補していたバラク・オバマ氏に対してこの言葉を使ったことで、バッシングを浴びました。
その言葉を多数派である草食動物の警察官が、犯罪者の肉食動物(しかもずるがしこいとされるキツネ)に言うということは、大人であれば誰しもが「ああ、そういう意味ね」となるシーンなのです。
古典映画の差別的なシーンを再現
そんなニックが一度は追い出されそうになるアイスクリーム屋さんのシーンも、実は人種差別というテーマを表す重要なシーンです。
このシーンは、1956年に公開された映画「ジャイアンツ」という話題作をオマージュしたものといわれています。
「ジャイアンツ」では、ダイナーを経営する店主がヒスパニック系の家族を、人種を理由に追い出そうとするシーンがあります。
しかもズートピアのシーンと同じように、
"We reserve the right to refuse service to anyone"
(我々は誰に対してもサービスの提供を断る権利があります)
というサインを見せつけて。
「ジャイアンツ」は女性の自立や人種差別という20世紀の問題を扱ったセンセーショナルな作品でしたが、そのシーンを彷彿とさせるシーンを映画の冒頭に持ってきたというのは、
「この映画は女性の自立と人種に対する偏見について扱いますよ」
というメッセージとして受け取れます。
かわいいはウサギ同士しか言っちゃいけない
ジュディはことあるごとに「かわいい(cute)」と言われ、そのたびに怪訝そうな顔をします。
あるシーンでは「かわいい」という表現はウサギ同士の間でしか言っちゃいけないということを主張すらします。
英語圏に住んでいる人ならピンとくると思いますが、このジュディの主張は"ニガー"という言葉の扱い方に似ていますよね。
ニガーとは、アフリカ人奴隷がいた時代から使われていた大変侮蔑的な言葉ですが、ラップ音楽やギャング映画では今でもしょっちゅう聞く言葉です。
実際に友達がこの言葉を使っているのを聞いたことがある人もいるかもしれません。
でもだからといって自分も使っていいと思ったら大間違い。
この言葉には、「黒人同士なら使っていい」という暗黙のルールがあるのです。
ジュディらうさぎにとっての「かわいい」と全く同じ扱いです。
こんなところからも、現代社会における人種問題の風刺が読み取れますね。
禁断の「南部の唄」を彷彿とさせる衣装
画像:Brer Rabbit - Splash Mountain by Haydn Blackey
物語の終盤で、一度すべてを諦めたジュディをニックが励ましに行くシーンがあります。
そこでのジュディの服装と、上のうさぎどんの服装を見比べてください。
ものすごい似ていますよね?
しかもジュディが話す相手はキツネ。
ディズニー映画「南部の唄」でうさぎどんとやり取りをするのもキツネどん。
このシーンは、映画「南部の唄」への明らかなオマージュなのです。
そもそも「南部の唄」は、黒人奴隷と主人の関係性を美化したことで全米黒人地位向上協会から「間違った歴史の認識を煽る」として批判され、その後ディズニー側の自主規制により一切映像が流れなかったいわくつきの映画です。
そんな人種問題に根強くかかわった作品をオマージュすることからも、ズートピアの真のテーマが何かということが読み取れます。
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豊富なパロディとダジャレ
これだけリアルなアメリカ社会の問題を風刺した作品のため、作中にはアメリカ人にとってはおなじみのパロディや英語ならではのダジャレがちりばめられています。
ジュディのプレイリストは動物だらけ
ジュディが移動中に聞いている音楽のプレイリストが映るシーンがあります。
それらをよーく見てみると、その中にはディズニー映画の音楽に動物の名前をかけたダジャレタイトルがたくさんあることがわかります。
Let It Goat(ヤギのままで)
元ネタ:アナと雪の女王の"Let It Go(ありのままで)"
Part of Your Wool(パート・オブ・ユア・ウール)
元ネタ:リトルマーメイドの"Part of Your World(パート・オブ・ユア・ワールド)"
Can You Feel the Fluff Tonight(フワフワを感じて)
元ネタ:ライオンキングの"Can You Feel the Love Tonight(愛を感じて)"
Ara-bunny Nights(アラバニー・ナイト)
元ネタ:アラジンの"Arabian Nights(アラビアン・ナイト)"
アーティスト名も動物だらけ
ジュディがプレイリストをスクロールすると、今度は有名アーティストの動物ダジャレバージョンの名前が表示されます。
Fleetwood Mac⇒Fleetwood Yak(ヤク)
Foo Fighters⇒Fur Fighters(毛皮)
Adelle⇒Gazelle(ガゼル)
Guns N' Roses⇒Guns N' Rodents(げっ歯類)
Selena Gomez⇒Hyena Gomez(ハイエナ)
Kanye West⇒Kanine West(犬)
Mick Jagger⇒Mick Jaguar(ジャガー)
個人的にはミック・ジャガーがそのままミック・ジャガーなのが好きです。
企業名も動物だらけ
もちろんズートピアの街並みに登場する企業やお店の名前も動物ダジャレです。
Carrot iPhone (Apple iPhone)
⇒りんごの代わりに人参がトレードマークです。
Zuber (Uber)
⇒アメリカではポピュラーなライドシェアサービス(白タク)の動物(Zoo)版です。
Lemming Brothers
⇒レミングとリーマン。英語で発音するとかなり近いです。
Mousey's (Macy's)
⇒大手デパートチェーンの名前をねずみとかけました。
Preyda (Prada)
⇒Preyは獲物の意味です。某映画を思い出しますね。
Targoat (Target)
⇒大手スーパーマーケットチェーンのヤギ版です。
Calvin Swine (Calvin Klein)
⇒大手下着ブランドのイノシシ属版です。
Trader Doe's (Trader Joe's)
⇒僕もよく利用する大手スーパーマーケットチェーンの女鹿版です。
アメリカ人なら大爆笑のあるあるネタ
最後にとっておきのネタをご紹介します。
それがこちら。
運転免許証や身分証明書の発行の際に訪れる必要のあるDMVです。
日本で言う免許センターみたいなものです。
映画ではジュディとニックが犯人のものと思しきナンバープレートの照会のためにやってきます。
現実世界のDMVは、利用者の平均待ち時間が40分台と言われています。
がしかし、窓口での対応も遅い上に、何度も待たされては窓口に呼び出され、また別の担当が出てくるまで待たされては窓口に呼び出され、という繰り返しのため、実際にはひとつの手続きに数時間かかることもざらです。
それをアメリカ人はほぼ全員知っているから、そのDMVの担当者が全員ナマケモノという表現は、痛烈な風刺がきいていてとてつもなく面白いわけです。
僕はズートピアを日本の映画館で観たのですが、このシーンで大笑いしていたのは僕一人でした・・・。
ズートピアはアメリカに住んでいると何倍も面白い!
いかがでしたか?
子ども向けのアニメーション作品と侮ることなかれ、実は「ズートピア」は実際のアメリカ社会に対する風刺とパロディがたくさん詰め込まれた超大作なのです!
しかも物語が進むにつれて、映画を観ている人に対して、人種と偏見の問題や女性の人権に関して問いかける構造になっています。
トイストーリーの時にも説明しましたが、子どもがストーリーを純粋に楽しんでいる間に、一緒に観ている大人はその裏に隠されたメッセージやジョークを楽しめるという構造こそがディズニー映画の魅力だと思います。
これらの情報を踏まえたうえでもう一度映画を観て、今までとは一味違った「ズートピア」の世界を楽しんでいただけたらと思います!
では、また次の記事でお会いしましょう!