まるごとアドリブ

ジャズの知識ゼロで「アメリカ唯一のジャズ専門音大」に留学したドラマーの奮闘記。

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創立3年目、在籍生徒数100人ちょっとの音楽大学に留学したメリット・デメリット

どうも、留学開始時から1キロも体重が変わらないマルヒロです。

 

僕は現在、カリフォルニアはバークレーにある

California Jazz Conservatory(通称CJC)

というジャズ専門の音楽学院に通っています。

 

こちらの学校、正式な音楽学院として認可されたのが2014年のため、僕が入学した2016年の段階ではまだ創立3年目でした。

 

しかも大学の規模がものすごく小さく、全校生徒も120人いるかいないかといったところです。

 

そんな「できたばっかり、小さい、実績も少ない、ジャズ専門」というニッチな大学に留学して4年目のマルヒロが感じる、CJC留学のメリットとデメリットをご紹介します!

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デメリット

個人的に、いいニュースと悪いニュースのどっちを先に聞きたいかと問われたら悪いニュースと答えるタイプなので、先にCJC留学のデメリットをご紹介します。

留学生の受け入れ態勢が整っていない

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CJCは、創立後まもなくF1ビザを取得した学生の受け入れを開始しました。

とはいえ、そもそも学生数が少ないので、海外からやってくる留学生もあまりいません。

 

そのため、必要最低限の手続きのノウハウはあっても、F1学生を受け入れる際の手順が割とあやふやです。

 

僕が入学する際も、ビザ申請に必要な書類はこちら側から

「○○と××と△△が必要だから送ってください」

とリクエストをして、やっと送られてくるような状態でした。

 

さらに、僕はなぜか一時帰国をしてアメリカに再入国しようとすると

「SEVIS(アメリカに留学する学生を管理するデータベースのようなもの)の情報に問題があるから」

といわれ別室に連れていかれるのですが(しかも毎回)、

 

それに関して学校の担当者に問い合わせても

「ごめん、よくわからない」

という返答しかもらえていません。

 

これに関してはいまだに解決していないので、現在進行形の問題だと言えます。

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OPTとかの仕組みをよくわかっていない

F1ビザを持った留学生には、

「在籍する大学で学んだことに関する分野の仕事をするなら、卒業しても1年間はアメリカに残っていいよ」

というシステム(OPT)があります。

 

僕と同じタイミングで入学したもう一人の日本人留学生は、このOPTを使ってアメリカ滞在の期間を延ばそうとしているのですが、学校側が

「OPT?なにそれおいしいの?」

状態だったために、いちからその仕組みを説明していました。

 

ほかにも、留学中のアルバイトの制限や、ビザ資格を保持するための必要最低単位数など、F1ビザで留学する学生には様々な条件が付随するのですが、当初学校側はほとんど理解していませんでした。

 

今でこそ、僕らが説明したおかげである程度理解してくれてはいますが、僕らも決してビザの専門家ではないのでなかなかわからないことがあります。

 

大手大学であれば、何か問題があっても留学生の諸々を担当する窓口に相談すればいいのですが、それができないというのはなんとも不安です。

学生としての恩恵を受けづらい

CJCのすぐ近くにあるUCバークレーなどの大手大学では、在学生が利用できる信用組合(銀行代わり)や医療保険、医療センターなどがあります。

また、学生証を提示することでスーパーでの買い物が割引になったり、学生限定のイベントに参加できたりもします。

 

残念ながらCJCには、学校指定の保険もなければ信用組合もありません。

学生証は発行してくれるので一部施設の学生割引は適用されますが、学校の知名度があまりにも低いため、UC生ほどの待遇は受けられません。

 

ほかにも、オンラインで学生向けの教材を購入する際に、自分が通っている大学の名称を入力することがあるのですが、CJCの名前が登録されていないために、学生として認めてもらえないケースも多々あります。

 

3年もこの生活をするとなれますが、いまだにUCバークレーの学生がスーパーで割引されているのを見ると、ちょっと悔しい気持ちになります。

開講される授業が少ない

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学生が少ないと、どうしても1学期の間に開講できる授業の数も限られてきます。

 

大手大学だと、同じ科目を複数の教授が教えていて、その中で自分の好みに合う教授の授業を選ぶというのがあたり前ですが、そんな贅沢なことはCJCではできません。

 

どんだけ自分が苦手な教授でも、その教授が必修科目を教えていたらその授業を取るしかありません。

 

また、必修授業が人数不足で開講されないという事故も起きます。

そうなってしまうと、もう1年待って履修する必要が出てきてしまうので、予定通り卒業するのが難しくなることもあります。

ここばかりは運の要素も強いのですが、早い段階でとれる必修科目はすべてとる、というスタンスでいないと後で痛い目を見ます。

 

ほかにも、学校を運営するスタッフの数も少ないため、事務室に誰もいなくて必要な機材を借りられなかったり、メールの返信がなかなか返ってこなかったりということも、小さな大学ならではのデメリットかなーと僕は思います。

メリット

では、ここまでだいぶ学校に対しての文句を垂れてきたので、ここからはCJCをほめちぎりたいと思います。

風通しがものすごくよい

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これは物理的な話ではありません。

というか、学校のほとんどが地下にあるので、物理的にいったら風通しはだいぶ悪いです。

 

そうではなく、意見の通りやすさの話です。

 

冒頭でもお伝えしたように、CJCはまだできたばかりの大学です。

ということは、学校側も常に試行錯誤をしながら少しずつ大学を育てている最中なのです。

 

この記事の前半でお伝えしたデメリットの多くは、僕が在籍していたこの3年間でもだいぶ改善されてきましたし、学校運営に対するフィードバックはかなり迅速に反映してくれます。

 

ある学期で○○先生の授業が不評だったので、次の学期では別の先生が教鞭をとっているなんてこともざらです。

 

困ったことがあれば、アポなしで学長室に行き、不平不満を学長に直接伝えることすらできます。

というか、学長の方から学生一人一人に、

「今学期の様子はどう?何か困っていることは無い?」

と声をかけてくれます。

 

僕も何度も学長に相談をし、その相談がきっかけで授業内容が変わったり、学校内の設備が新しくなったりしたこともありました。

 

こればっかりは、大手大学ではなかなか見られない現象だと思います。

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学生と教授が対等

学生の人数が少ないということは、授業はすべて少人数形式になります。

 

少人数授業の最大のメリットは、教える側と教わる側の距離感が近いこと。

 

人数も少ないから、みんながお互いの名前も特性も把握しているし、授業外でも気軽に話しかけに行って質問や相談をすることができます。

 

CJCの教授は、それこそバークリー音楽院などを卒業した一流プレーヤーばかりなのですが、皆さん学生たちを家族や友達のように扱ってくれるのです。

僕なんて、バークリー時代に上原ひろみと同級生だった教授と、サシでご飯に行ったことすらあるんですから!

 

しかもそこでも

「ヒロ、君はいま授業の内容で困っていることはないか?何かあればいつでも電話でもメールでも手紙でもなんでもよこしてくれ。」

という大変優しいお言葉をいただきました。

 

どうしても学校の規模が大きくなればなるほど、一人一人の学生に気を配れる教授も減ってきます。そういう点で、小規模の大学で勉強するということの恩恵を受けられるのではないでしょうか。

ひとりひとりの成長を見守ってくれる

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それだけ学生と講師陣の距離が近いということは、学生ひとりひとりにきちんと目が行き届いているということを意味します。

 

そして、それこそがCJCのカリキュラムの最大の強みだと思います。

 

実はCJCの講師陣は定期的にミーティングを開き、それぞれが受け持つ授業での学生の様子を共有しているそうです。

そこで、学生ひとりひとりの成長度合いや得手不得手を全員が把握し、次の学期以降の指導方針を検討するそうです。

 

ほかにも、学長や学長のアシスタントが普段の授業の様子も常にチェックしていて、学生がそれぞれどれくらいのレベルの技術と知識を身に付けているのかを把握しています。

 

さらに学長に至っては、学期末の定期演奏会ですべてのグループ(すなわちすべての学生)の演奏を確認します。

 

それらのデータは、学期ごとにアンサンブル(バンド形式の実践型授業)を組む際に使われます。

同じくらいのレベルの学生が同じアンサンブルに入るように調整し、常に学生同士で切磋琢磨できる環境を作ってくれるのです。

 

それ以外にも、

「君はこれが苦手だからこの授業をとったほうがいい」

「今学期はこの授業の難易度を少し下げたから、君は今のうちにこの授業を取ったほうがいい」

といった履修のアドバイスも、上記のデータをもとに伝えてくれます。

 

そしてそれだけ一人一人の学生の成長度合いを見てくれているので、講師陣も常に褒めたりアドバイスをくれたりするのです。

 

「ヒロ、○○先生から聞いたよ!今ブラジル音楽に力を入れてるんだってな?それならこのアルバムおすすめだから聞いてみるといいよ!」

 

とか

 

「ヒロ、さっきちょろっと聞こえてきたけどあのドラムソロめっちゃよかったよ。去年僕のアンサンブルで演奏していた時よりもバスドラムが安定していてすごい心地よかった。この調子でもっとうまくなろうな!」

 

とか言われたら、学生としてはめちゃめちゃモチベーション上がりませんか?

 

僕はこのものすごくパーソナルなフィードバックシステムがあったおかげで、常に高いモチベーションを維持しながらこれまで3年間CJCに通ってきました。

 

僕がCJCに入ってよかったなと一番思えるのは、この仕組みです。

さいごに

ということで、今回は小規模&創立したばかりの音大で経験したメリットとデメリットを細かく紹介してきました。

 

もしアメリカへの音楽留学を検討している人がいたら、この記事を参考にしてCJCも留学先の候補に入れていただければなと思います。

 

そして、CJCに関する質問やご相談がある方は、いつでもツイッターやコメントで直接聞いてくださいね!

よろこんでお力になります!

 

ではまた。